インプラント

インプラントを長持ちさせるのはインプラントのメンテナンス次第

2017.10.3
 インプラント治療が終わると、自分の歯と同じように快適に食事や会話ができ快適に過ごすことができます。
 しかし、インプラントにも天然の歯と同様に歯ブラシなどの日々のケアが必要です。また、歯医者さんでの定期的なメンテナンスするかどうかでインプラントの寿命は大きく変わってきます。

インプラントメンテナンスの目的

インプラントメンテナンスの目的
 インプラントメンテナンスの目的は、インプラント周囲疾患の発症を早期に発見するための「定期検診」の役割とインプラント周囲疾患の発症のリスクを抑えるための「健康維持」の役割とで大きく2つあります。
 歯周治療後のメンテナンスでは、歯周炎の再発が早期に発見できた場合、少しの治療で健康状態に戻せることがほとんどですが、インプラント周囲炎が発症してしまうと、外科的な治療が必要になることが多いです。
そのため、インプラントのメンテナンスは天然の歯のメンテナンスよりも高い精度で行われることが望ましいです。
 インプラントの最大の目的としては、少しの支持骨を失う前にインプラント周囲組織の異常に気付いて、健康な状態を取り戻すことです。

インプラント治療後のメンテナンスについて

 インプラントメンテナンスの基本は自身が毎日行うセルフメンテナンスですが、定期的に歯科医院に来院して行うメンテナンスも必要になります。

●毎日のセルフメンテナンス
 毎日のセルフメンテナンスは、基本的にはインプラント以外の天然の歯と同様に毎日に歯磨きは必要不可欠です。ポイントとしては、歯と歯茎の間の歯周ポケットを意識して磨くことでインプラント周囲炎の予防になります。
また、歯磨きだけではなくデンタルフロスや歯間ブラシを併用して使うことで磨き残しを防ぐことができ、インプラント周囲炎だけでなく、歯周病や天然の歯の虫歯も予防することができます。

●歯科医院での定期的なメンテナンス
  歯科医院でのメンテナンス内容は、歯科医院によって多少のバラツキはありますが、主には以下の内容になります。

①口腔内の状態確認
 口腔内の清掃状態の確認や歯肉などの周辺組織に腫れや炎症がないかを確認、またインプラントの動揺やインプラント周囲炎が発症する症状が見られないかどうかを確認します。
それに加えて、インプラントと人工歯の連結が壊れていないかの確認も忘れず行います。

②噛み合わせの確認
 咬合紙という紙を噛んでいただいて、噛み合わせのバランスを調整します。
噛み合わせの確認をしないと噛み合わせが悪くなります。噛み合わせが悪くなったままだと、一定の歯に大きな負担がかかってしまうため他の歯の健康維持にもつながります。

③レントゲンによる診査
 レントゲン撮影を行い、インプラントと周囲の骨の状態から、歯槽骨の炎症や骨吸収などの確認をします。
またその時に、歯石の蓄積や虫歯があるかなどのインプラント以外の歯の状態も確認します。
インプラントの埋入した場所が上顎の奥歯の場合は、上顎洞炎を確認するために鼻の両側にある上顎洞という骨の空洞で炎症が起きていないかを確認します。

④クリーニング
 インプラントやその他の歯についた汚れを落とします。毎日の歯磨きでは落としきることができない歯の表面や歯と歯肉の境目の歯垢を落とします。
また、汚れがひどい場合は上部構造の部分を外してクリーニングを行うこともあります。歯石や歯垢が蓄積してしまうとインプラント周囲炎や歯周病の原因になりますので毎日の歯磨きで落としきれない汚れを落としてもらうことはインプラント周囲炎や歯周病の予防に大切です。

⑤歯磨き指導
 口腔内の状態を確認したときに、汚れがひどかった部分に対しての効果的な磨き方や歯ブラシ以外のデンタルフロスや歯間ブラシなどの補助的なものの使い方を指導します。インプラント治療を行った箇所は歯根膜がないため、天然の歯に備わっている触覚や痛覚などの機能がない状態です。
 そのため異常が起きても気づきにくくなる傾向があります。インプラント治療が完了しても油断せずに、治療後のトラブルを防ぐためにも、歯科医院での定期的なメンテナンスは忘れず行っていきましょう。

インプラントメンテンナンスが重要な理由

インプラントメンテンナンスが重要な理由
●インプラントのメンテナンス不足はインプラント周囲炎の原因になる
 インプラントをつければ虫歯にも歯周病にもならないと思っているのは大きな間違いです。インプラントはチタン製のボルトを使っているので虫歯になることはありませんが、インプラント周囲炎という歯周病に似た病気になってしまうことがあります。
 インプラント周囲炎の始まりは、ボルト部に細菌が感染することです。
初期の段階ではボルト周囲の細菌が増えることでまわりの骨を溶かしていきます。その後、インプラント周囲の歯茎に腫れや炎症などが起こってきます。
この段階で、初めて異常に気付くことができますが、すでにインプラント周囲の骨は吸収が進行している状態になっていることがほとんどです。
症状の後期には歯茎の腫れや出血などの症状が出ますが、その段階まで悪化してしまうと治療が困難になり、インプラントを抜かなければならなくなる可能性もあります。
 インプラント周囲炎は、日々の歯磨きなどのセルフメンテナンスや定期的な歯科医院でのメンテナンスを行うことで、インプラント周囲炎にはかかりにくいですし、仮にインプラント周囲炎になったとしても早期に発見することで治療することで健康な状態に戻すことができます。
 インプラント治療完了後は、そこで終了ではなく、継続的なメンテナンスを行い管理していくことが大切です。


●インプラントの保障が使えない

 インプラント治療は、保険適用外の治療になり高額になるため保証がついてくることが多いです。インプラントをセットした後、すぐに外れてしまったなどの保証期間内にトラブルなどあれば無償で対応してもらえます。
しかし、定期的なメンテナンスを怠ってしまうとその保証が使えなくなるケースがあるので注意しましょう。
 インプラント保証制度には、欠けたり、割れたりするなどのトラブルに備えた保証制度がありますが、一定の条件が課せられていることがほとんどです。
しっかりと毎日のケアや定期的なメンテナンスを行っていても何かの原因で欠けてしまったりした場合は、保証が効きますが、定期的なメンテナンスを怠っている状況でトラブルが起きてしまっても本人の責任となり保証が効かないことがあります。
 保証制度の内容や保証期間、一定の条件に関しては歯科医院にそれぞれになりますので事前にしっかり確認しておくことが必要です。

インプラントメンテナンスの費用

インプラントメンテンナンスの費用
 インプラント治療は保険適用外で自由診療になりますので、ある程度の相場はありますが歯科医院によって費用が異なってきます。
 インプラントメンテナンスに関しても同様であり自由診療扱いになりますので、それぞれの歯科医院によって費用は異なってきます。
 インプラント治療をするときは、その後に必要になるメンテナンスの費用に関しても確認しておく必要があります。

●医療控除の利用は可能
 インプラント治療やインプラントのメンテナンスは、保険は適用されないが、医療費控除の対象となることがあります。医療費控除とは、治療にかかった医療費や通院費など実質負担額が年間で10万円を超えたときはその分は税金から控除できる制度になります。自身だけでなく家族の分の医療費も合算することができます。
 医療費控除として認められる場合は、あくまで治療目的だということが必要になります。歯科医師が治療においてインプラントが必要と判断した場合は医療費控除の対象として認められます。

インプラント周囲炎とは?

 インプラントのメンテンナンスを怠ると発症する可能性が高くなるインプラント周囲炎とどんな病気なのか詳しくご紹介します。

●インプラント周囲炎とは
 インプラント周囲炎とは、顎の骨に埋め込んだインプラント周囲の組織で起こる炎症のことです。インプラントの周囲の粘膜で炎症が起こるインプラント周囲粘膜炎から、徐々に炎症がインプラントを支える骨にまで広がってしまい、インプラント周囲炎が起こります。
 インプラント周囲炎は歯周病と同様に放置しておくと、インプラントを支える骨を溶かしてしまい、インプラントが最終的に抜け落ちてしまいます。
 原因などは、歯周病と同じですが炎症が起きにくかったり、出血がなく、痛みがないことから歯周病以上に自覚症状がなく気づきにくいです。また、進行速度は歯周病よりも速く、歯周病の約20倍の速さで悪化していきます。

●インプラント周囲炎が起こる原因
 インプラント周囲炎の主な原因は、毎日の歯磨きなどのセルフケアを怠ったり、定期的な歯科医院での検診を受けないことによって、プラークや歯石が溜まり歯周病菌が増えることによって発症すると考えられます。
インプラントは、天然の歯よりも菌への防御能力が低いため、毎日のセルフメンテナンスだけでなく、歯磨きなどで落としきれないプラークの除去やインプラント周囲炎の早期発見が大切な予防になりますので、定期的な歯科医院でのメンテナンスは非常に重要です。
 また、喫煙や歯ぎしりなどの癖がある人、口呼吸が習慣になってしまっている人などはインプラント周囲炎のリスクを高めてしまうので日々の生活習慣を見直すことも大切です。

●インプラント周囲炎の治療方法
 もし、インプラント周囲炎になってしまったら、早期の治療が不可欠です。前述したとおりインプラント周囲炎の進行は非常に速いので、早期治療によって進行させないことが大切です。
インプラント周囲炎の治療方法は、進行具合により違ってきます。
歯槽骨が吸収されていないインプラント周囲粘膜炎の場合ならば、クリーニングや洗浄、殺菌などを行いインプラント周囲炎の進行を抑えます。また、細菌学的検査、噛み合わせのチェックなどの対処法もインプラント周囲粘膜炎の治療で効果的です。
 炎症が歯槽骨に及んでいる場合は、外科的な処置も行う可能性があります。切除療法や再生療法が外科手術になります。歯肉を切開して、インプラント体の除菌や歯周ポケットの除去を行うのが、切除療法になります。
組織移植で歯肉や骨のボリュームを増やすのが再生療法になります。

 インプラント周囲炎には対症療法はありますが、根本的な治療法がありません。そのため、日々の歯磨きのセルフメンテナンスはもちろんですが、それだけでは効果が低いため定期的な歯科医院でのメンテナンスを行って落としきれないプラークを除去してもらい、インプラント周囲炎を確実に予防していくことが大切です。

まとめ

まとめ
 インプラント治療が完了して、セットされれば虫歯の心配はしなくて良いと油断する人もいるかもしれませんが、インプラントを入れた人にはインプラントを入れた人だけがなる病気があることを知っておくことが大切です。しかし、毎日のケアを忘れずに行い、歯科医院での定期的なメンテナンスによってインプラント周囲炎にかかるにくいため、定期的なメンテナンスを行っていくことでインプラントをよりするように使っていきましょう。
 また、インプラント周囲炎に仮になってしまっても早期治療によって対処方法はありますので、多少でも異常を感じた時にはすぐに歯科医院にいって診てもらうことが大切です。 
 インプラント周囲炎は進行が速いため気づいたときにはインプラント周囲炎が進行しており、インプラントを取り除かなければならなくなることを防ぐために定期的に診察してもらう必要がありことを知っておいてください。


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