インプラント

インプラント周囲炎はどんな病気なのかを詳しく知って対処法を知ろう

2017.10.11
 インプラント周囲炎とは、インプラントに生じる歯周病に似た病気のことです。日頃のケアや定期的な歯科医院でのメンテナンスを怠っていると発症してしまいます。歯周病と異なるところは、炎症や痛みなどが起こりにくいため気づきにくく、歯周病よりも速いスピードで悪化していきます。
 このようなインプラント周囲炎について詳しくご紹介していきます。

インプラント周囲炎とは

インプラント周囲炎とは
 インプラントは天然の歯と同様にしっかり噛むことができます。しかし、天然の歯と比べて周囲への抵抗力が弱くなっているため、日ごろの歯ブラシなどのセルフケアだけなく、定期的な歯科医院でのメンテナンスが必要になってきます。
 歯ブラシなどのセルフケアのみで安心しているとインプラント周囲炎になってしまう可能性は非常にたかいので、歯科医院でのメンテナンスは忘れず受けましょう。

インプラント周囲炎発生の原因

インプラント周囲炎発生の原因
 インプラント周囲炎は、歯垢を構成している中の歯周病菌がインプラント周囲の歯茎や骨などに感染して炎症が起こります。
 インプラント周囲炎の主な原因は以下のようなことが考えられます。
●メンテナンス不足
 
前述したようにインプラントは抵抗力が天然の歯と比べ弱くなるため歯科医院でのメンテナンスが必要不可欠になります。
メンテナンスが必要な理由として、日ごろのセルフケアである歯ブラシなどでは取り除くことができない歯垢や歯石があります。そのため、歯ブラシなどのセルフケアに加えて歯科医院でのクリーニングが必要になってきます。

●タバコ
 
喫煙は、口腔内の免疫力を下げてしまいます。そのため、細菌感染のリスクがタバコを吸わない人と比べて高くなります。また、喫煙によって唾液量も下げてしまい、口腔内が唾液不足になり細菌が増えてしまいインプラント周囲炎になってしまいます。 

●過去に歯周病にかかったことがある
 過去にインプラントでない歯が歯周病になったことがある場合は、インプラント周囲炎になりやすいです。

●糖尿病を患っている
 糖尿病を患っている場合、感染症にかかりやすいため歯周病菌にもかかりやすくなります。

●噛み合わせが原因での過剰な負担
 噛み合わせの調整をしっかり行っておらず、歯ぎしりや食いしばりによってインプラント体に過剰な負担がかかることで周囲の骨の吸収が進みやすくなります。

●口の中の乾燥
 口呼吸の習慣化などで口の中が乾燥していたり、薬の副作用などで唾液量が低下している場合、唾液によって歯垢を洗い流すことができにくくなるため、歯垢が溜まりやすくなります。

 インプラント周囲炎の原因や進行を早めてしまったり、引き起こしやすくしてしまう原因をご紹介してきましたが、最も大切なのは日ごろのセルフケアに加えて歯科医院でのメンテナンスを忘れず行っていくことです。 インプラント治療を行った人は、誰でもインプラント周囲炎になる可能性があることを忘れないでください。インプラントは、メンテナンスなどをしっかり行うことで長く使うことができます。より良い状態を保っていくことを心掛けてください。

インプラント周囲炎の症状の段階

インプラント周囲炎の症状の段階
 インプラント周囲炎の症状としては、歯周病と同様に歯茎が赤く腫れたり、出血したり、痛みがでてきます。
しかし、歯周病と比べてだいぶ進行してからでないとこのような症状は自覚できません。また、問題なく食事もできてしまうため非常に気付きにくいです。自覚しにくいうえに、歯周病と比べて発症してからの進行速度が非常に早いため、痛みなどを自覚したときにはすでに重度になっていることも十分あります。
●第一段階
 インプラント周囲粘膜炎の状態です。歯茎に炎症や腫れ、出血の症状がでてきます。
●第二段階  
 炎症が広がり歯槽骨まで入り込む段階です。他にも、歯茎の腫れや出血がひどくなってきて、歯周ポケットの深さも深くなっていくなどの症状が見られるようになります。
●第三段階  
 炎症がさらに広がっていき、そのことが原因で歯槽骨がやせ始めていきます。また、第二段階よりも歯茎の腫れや出血がひどくなります。それに加えて歯周ポケットが深くなったことが原因で膿も出てきてしまいます。 インプラント周辺の歯茎が退縮しはじめ少しづつ顎の骨が溶けていきます。顎の骨が溶けてしまうことで支えがなくなり、インプラントがグラつき取れてしまう可能性もあります。

インプラント周囲炎の段階毎の治療方法

 インプラント周囲炎になってしまった場合、もちろん治療が必要になります。
症状の段階によって適切な治療が必要になります。
●第一段階(歯周ポケット3ミリ以下)
 
第一段階ではインプラント周囲粘膜炎の状態です。インプラント周囲粘膜炎はインプラント周囲炎の諸症状になります。
 この場合、歯周ポケットが3ミリ以下のため基本的に治療の必要はありませんが、口腔内の衛生状態が悪い場合や歯茎の腫れ、出血などの症状が見られた場合、歯面と歯周ポケットの内部に存在している汚れを除去してプラークコントロールを行います。
 
●第二段階(歯周ポケット4~5ミリ)
 
炎症が広がることで歯周ポケットが深くなってしまっている状態です。
 細菌が歯槽骨まで入っている状態の場合、第一段階での治療にもあったPMTCに加えて消毒液が使用した洗浄が必要になってきます。
【殺菌療法】
 
洗浄剤を使うことで、インプラントをしっかりと洗浄していきます。また、深くなってしまった歯周ポケットに洗浄剤を入れることで部分洗いを行います。
また、うがいをすることでも口腔内の洗浄することができます。
【抗菌療法】
 
抗生物質を使った方法です。抗菌療法は急性炎症や菌血症の症状を抑えたり、予防したりするときに行います。抗生物質は飲み薬と直接塗布する塗り薬があります。 抗菌法による抗生物質をつかった治療は、第二段階の中でも骨の吸収などがみられ症状が進行しているときに行われることが多いです

●第三段階(歯周ポケットが5ミリ以上で骨吸収や出血の症状もある)
 
骨吸収が進行してしまうと、感染した歯肉を除去する処置や歯肉自体を切開してしまい、インプラント体そのものの汚染を除去する外科的な処置が必要になります。

[外科的治療方法]
【切除方法】
 
歯茎を切開して、洗浄剤を使用してインプラントの表面をきれいにします。洗浄後、インプラントの表面を機器などを使い磨いて、歯周ポケットを切除します。切除後、インプラントについている肉芽組織を取り除いて完了です。
【再生療法】
 歯槽骨や歯茎がやせてしまっている場合、歯槽骨や歯茎を回復させるために再生療法をおこないます。 骨を再生する骨移植やGTR法、歯茎の再生する遊離肉移移植などの方法があります                                                                              インプラント周囲炎は段階によってさまざまな治療はありますが、外科的な治療方法を行っても症状が治まらず回復の見込みがない場合、インプラントを取り除かなくてはなりません。
インプラント周囲炎は予防することで防ぐことができるのできっちり予防していきましょう。

インプラント周囲炎の予防方法

インプラント周囲炎の予防方法
 インプラント周囲炎は予防していくことで発症を防ぐことができます。インプラント周囲炎は進行が速いため気づいたときには、せっかく入れたインプラントを取り除かなくてはならないかもしれません。
 そのようなことが起きないように普段からしっかりとした予防を心掛けておきましょう。
●日常からしっかりプラークコントロールをおこなう
 
インプラント周囲炎での主な原因であるプラーク(歯垢)に存在する歯周病菌は日ごろの歯磨きによって、取り除きます。しかし、しっかりと落とすためには適切な歯磨きを行うことが大切です。歯並びや口腔状態によって歯磨きの仕方が変わってきますので、歯医者さんに一度相談して適切な歯磨きの仕方を指導してもらうことが日々のケアを充実したものにするためには重要です。
●歯科医院での定期的なメンテナンス
 
歯医者さんに歯磨きの指導を受けて、丁寧に毎日歯磨きをしていても歯磨きだけでは取り除くことのできないプラークが存在します。そのような箇所のプラークを取り除いてもらうために定期的に歯科医院でクリーニングしてもらう必要があります。また、クリーニングだけでなく検診を受けることでインプラント周囲炎の早期発見にもつながります。
インプラント周囲炎は自覚症状が出づらいため、メンテナンスと共に検診をうけることも おススメします。

インプラント周囲炎をそのままにしておくと

 インプラント周囲炎は前述したように発症してしまったら治療が不可欠になります。当たり前ですが、自然に治ることはありません。インプラント周囲炎を治療せずに放置しておくと周りの天然の歯にも影響がでてくる可能性は十分に考えられます。
そのうえ、歯だけでなく全身へも悪影響を及ぼして様々な悪影響をあたえることがあります。
●周りの天然の歯への影響
 
インプラント周囲炎は、歯周病と同じく歯周病菌が原因の感染症です。インプラント周囲炎が起こることで他の周りの歯も歯周病菌に感染してしまう可能性は高くなります。また、インプラント周囲炎によって、入れたインプラントがグラついてしまうと噛み合わせのバランスが崩れてしまい、他の歯に過剰な負担がかかってしまい歯周病の進行を早める結果になってしまいます。
●全身への影響
 
前述したとおり、インプラント周囲炎の原因は歯周病菌です。歯周病菌の出す毒素は血管などを通って全身に巡り、心臓病、糖尿病、脳梗塞、呼吸器疾患、腎炎など様々な病気の原因にもなります。 インプラント周囲炎を放置しておくことは、インプラントを取り外さなければならなくなるだけでなく、他の歯へも悪影響を及ぼします。
 歯だけでなく様々な思い病気の原因にもなりますので、インプラント周囲炎になった場合、すぐに治療が必要です。

まとめ

 インプラント周囲炎は放置しておくと、全身の病気にもつながってしまう怖い病気です。この病気はインプラントを入れた人なら、誰にでも発症してしまう可能性があることを忘れないでください。インプラント周囲炎を発症した場合、治療する術はありますが予防していくことが一番大切になります。インプラント周囲炎は日ごろの歯磨きを適切に行い、定期的に歯科医院でのメンテナンスを受けることで発症する確率をかなり低く抑えることができます。
仮になってしまっても早期発見であれば健康な状態に戻すことができますので、3ヶ月程度に1回は検診も含めてメンテナンスを行うことをおススメします。
 しっかりと予防を行って、インプラントを常に清潔な状態を保ちましょう。


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