毎日長時間スマホとにらめっこしている人は、口周囲の筋肉があまり使われなくなるので、口周囲にある「口輪筋」そして、笑うときに口角(口の端)を引き上げる「大頬骨筋」が衰えてしまう傾向にあります。そうすると、だんだんと口角が下がった老けた顔つきになってきてしまいます。また、猫背の状態を続けていると、首の部分にある広頚筋が衰え、あごの下がたるんで二重アゴになりやすいですし、フェイスライン全体がたるんで、いわゆる「ブルドッグ顔」になりやすいとされています。
このような、顔がたるむ現象というのは「加齢で肌にハリがなくなってくるせいだ」と思われがちなのですが、実は日頃のライフスタイルでの筋肉の使い方からくることが意外に多いものです。
長時間スマホをしている時というのは、大抵黙って口を動かさないものです。この状態が続くと、唾液線が刺激されないため、口の中が乾いてしまう「ドライマウス」を引き起こしてしまうことがあります。ドライマウスになると、唾液によるお口の自浄作用、緩衝作用、殺菌作用、再石灰化作用というような大事な作用がうまく働かなくなってしまうため、虫歯や歯周病を発症・進行させやすくなったり、強い口臭が出やすくなったりする原因になります。
●長時間スマホによって起こりやすいTCH
また、長時間スマホをしている時に起こりやすいものとしてTCHが挙げられます。TCHとは、Tooth Contacting Habitの頭文字を取ったもので、日本語では「歯列接触癖」と呼ばれています。その名の通り、上下の歯を接触させる癖のことを言います。
上下の歯を接触させる癖というと、「歯ぎしり」や「食いしばり」などを思い浮かべる人が多いかもしれません。確かにこの歯ぎしりや食いしばりというのは歯にとって悪影響を与えるものですが、このTCHはこれらのものとはちょっと違う、「くっ」という感じの軽い上下の歯の接触癖について、用いられます。
そもそも、通常食事の時以外には上下の歯は離れていているのが正常な状態だと言われています。食事、会話の時間を全て合わせても一日に20分程度が正常な接触時間だとされています。意外と短いものですね。
●歯へのダメージ
TCHがあると、上下の歯の接触時間が長くなります。そしてそれが軽い力であったとしても、歯を支えている組織にはダメージが加わり、知覚過敏が起こりやすくなったり、噛むと痛みが出たり、それが続くことによって歯周病も進行しやすくなってしまうと言われています。
●顎関節へのダメージ
上下の歯を長時間接触させることで、顎関節や咀嚼筋(噛む時に働く筋肉群)にも負担がかかり、顎関節症を発症させる原因にもなります。
●周囲筋肉へのダメージ
咀嚼筋の緊張は、側頭部や首、肩の筋肉にまで影響を及ぼし、頭痛、首の痛み、肩こりのような不調を引き起こします。
安岡デンタルオフィスでも、歯の不調を訴える患者さんの中でTCHの影響ではないかと思われる人も少なくありません。意外とTCHはじわじわとお口に悪影響を与えているものなのです。
もし、食事中や会話中以外で歯を接触する癖があるのに気づいた場合、なるべくすぐに止めるようにしましょう。自分で意識して止めるようになるだけでも、だいぶお口やその周辺への悪影響を減らすことができます。またTCHがあると夜間の歯ぎしりも起こりやすくなると言われていますので、TCHを意識して止めるようにすることで、自ずと歯ぎしりも改善できる可能性があります。
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