金属自体は実はアレルゲン(アレルギーを起こす原因となるもの)ではありません。ではなぜ金属がアレルギーの原因になるのかというと、金属が汗や唾液などの体液にイオン化して溶け出し、それが体内のタンパク質とくっついて、体にとって異物であると認識されてしまうからなのです。
●金属が触れたところのみに現れる接触性皮膚炎
こちらが一般的によく皆さんが想像する金属アレルギーで、アクセサリーなどの金属が直接触れた部分が赤くなったり、かぶれたり、かゆみが出たり、腫れたりというような炎症症状を起こす場合です。金属が触れた部分が汗をかくことで、金属イオンが溶け出し、たんぱく質と結合してアレルギー反応を起こします。特にピアスは金属イオンが皮下組織に直接触れている部分があることから、反応を起こしやすいと言えます。口の中では、銀歯が触れている粘膜がただれたり、口内炎を起こす場合があります。
●全身にアレルギー症状が現れるもの
金属というのは食品や車の排気ガスなどにも含まれていて、それを皆、知らず知らずのうちに体内に取り込んでしまっています。そして、そのような体に蓄積された金属が体内のたんぱく質と反応してアレルギー反応を起こすことがあります。
また、銀歯のような口の中の歯科用金属が、直接触れることのない全身の皮膚に症状を起こすこともあります。これは、口から入って体に蓄積された金属が、汗と一緒に皮膚から排出されるときにアレルギー反応を起こすからだとされています。そのため、汗をよくかく場所(手のひらや足の裏)に「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」と呼ばれる多数の小さな痒みを伴う膿だまりを作る症状が代表的で、そのほかにも全身性にアトピー性皮膚炎や、コインのような形の湿疹を作る貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)などを起こすことが知られています。
このようなアレルギー反応は、金属が体に長年蓄積されてから起こり始めることも多いため、「これまで長年銀歯で大丈夫だった」という人でも、ある日突然アレルギー反応が出てくることがあるため、注意が必要です。
それに対し、貴金属であるゴールド、プラチナ、チタンなどは唾液に触れてもイオン化しにくく、安定しているため、歯科金属アレルギーを起こしにくいと言えます。しかし、特にゴールドのように合金で使われるような場合には卑金属も混ざっているため注意が必要です。
もし、長く続いている体の湿疹が、歯科用金属が原因である場合、塗り薬などを塗り続けてもそれで治癒することはありません。もしも原因不明の皮膚の病気がある場合、一度皮膚科で歯科用金属のアレルギーテストを受けてみることをおすすめします。ですが、それで100%判明しない場合もあるため、できればお口の中の詰め物や被せ物には卑金属のものを使わない、というようにした方が安全だと言えます。心配な人は担当歯科医師に相談してみましょう。
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