エナメル質形成障害といっても、遺伝性のもの、後天的なものがあり、症状の出方もどのタイプかによって変わってきます。ちまたではよく、エナメル質形成不全、エナメル質形成不全症、エナメル質減形成、などの言葉が混同されて使われていますが、実は全て違うものです。詳しく分類を見てみましょう。
●エナメル質形成不全(後天的なもの)
遺伝性のものでない場合には「エナメル質形成不全」と呼ばれます。一般的には全ての歯でなく、局所的に症状が現れます。こちらは厳密には次の二つに分類できます。
<エナメル質減形成>
エナメル質の元となるタンパク質が作られる時になんらかの障害が起きた場合です。
<エナメル質石灰化不全>
エナメル質の元となるタンパク質はうまく作られたけれども、その後うまく石灰化しなかった(硬くならなかった場合です)。
ただ、両者は厳密に区別できないことが多いため、通常は遺伝的なものでないものに関しては、「エナメル質形成不全」という言い方をします。
●エナメル質形成不全(後天的なもの)の場合
歯というものは、生まれた時点で全ての歯がしっかりと完成しているわけではありません。つまり、生まれた後もあごの骨の中で、徐々に作られていくのですが、エナメル質が作られる時期に何か障害が起こると、その障害が起こったその部分のみにエナメル質形成不全が現れてきます。ちなみに歯のどの部分にエナメル質形成不全が現れているかで、だいたい生後どのくらいで障害が起こったかを推測することができます。そのため、スウェーデンの教科書にはこの現象を、事故が起こった記録が残るようであることから、「歯のフライトレコーダー」と例えています。
エナメル質形成不全は、エナメル質が形成されている時期に次のようなことが原因で起こる可能性があります。エナメル質を作る元になる「エナメル芽細胞」は、外から来る刺激に弱いため、様々なことが原因になりうるのです。
<全身的原因>
・栄養不足(カルシウム、リン、ビタミンA,C,D(特にD))
・発疹が出る病気、熱が出る病気(特に生後1年くらいの時期)
・抗生剤(アモキシリン)の服用
・過度のフッ素摂取
・早産
・全身的な病気の影響
<局所的原因>
・乳歯をぶつけた
・乳歯のひどい虫歯(歯根周囲に膿を溜めた場合)
●コンポジットレジン修復(歯科用プラスチック)
歯が柔らかくなってしまっている場合や着色がどうしても気になる場合には、その部分を薄く削って、コンポジットレジンと呼ばれる歯科用のプラスチックを詰めることで解決できます。ただし、コンポジットレジンは年数が経つにつれ変色してくるため、色合いが気になる場合にはその都度詰め直しが必要になります。
●ラミネートベニアを貼り付ける
着色の範囲が広い場合には、歯の表面を全体的に薄く削り、その部分にセラミックのベニアを付け爪のようにつける「ラミネートベニア」を行うこともあります。
●セラミックを被せる
歯の形に問題があって、詰め物やラミネートベニアでは対処できない場合には、セラミックを被せる方法で歯の保護、審美性の回復が可能です。先天性のエナメル質形成不全症の場合は、全体的にセラミックを被せるなどの対処が必要になってきます。
お子さんの歯に異常な着色があっても、適切な対処をすることで問題がでないケースも多いため、ほとんどの場合それほど心配することはありませんが、念のため一度早めに歯医者を受診することをおすすめします。
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