審美歯科

子供の歯が変色!形がおかしい!それはエナメル質形成障害が原因かも

2018.01.16
お子さんの歯が生えてきて、色が全体的にちょっとおかしい、部分的に白や黄色、茶色の着色がある、もしくは一部不自然に凹んでいる、というような場合、それは「エナメル質形成障害」が原因の可能性があります。生えたばかりの歯は正常な色や形で生えてくるのが当たり前、と考えられがちですが、実はそうでないケースも決して珍しくはありません。調査報告によると、全体の10%以上のお子さんがこのようなケースに相当するという結果が出ています。今回は、エナメル質形成障害とはどのようなものか、原因やその対処法・治療法について解説していきます。

エナメル質形成障害とは

エナメル質形成障害とは
エナメル質形成障害とは、歯の最も外側にある層である「エナメル質」の形成になんらかの問題がある状態をいいます。エナメル質は体の中で一番硬い部分であり、歯を様々な刺激から守る役割を果たしています。そのため、エナメル質がうまく形成されていないと、その部分がもろくなってしまい、虫歯にかかりやすくなるなどの問題が出てきます。

エナメル質形成障害といっても、遺伝性のもの、後天的なものがあり、症状の出方もどのタイプかによって変わってきます。ちまたではよく、エナメル質形成不全、エナメル質形成不全症、エナメル質減形成、などの言葉が混同されて使われていますが、実は全て違うものです。詳しく分類を見てみましょう。

エナメル質形成障害の分類

●エナメル質形成不全症(遺伝性のもの)
エナメル質の形成障害が遺伝性の場合は「エナメル質形成不全症」と呼ばれます。全ての歯の色や形がおかしい場合には、この疑いが強くなります。発生頻度は8000〜14000人に1人と言われています。

●エナメル質形成不全(後天的なもの)
遺伝性のものでない場合には「エナメル質形成不全」と呼ばれます。一般的には全ての歯でなく、局所的に症状が現れます。こちらは厳密には次の二つに分類できます。

<エナメル質減形成>
エナメル質の元となるタンパク質が作られる時になんらかの障害が起きた場合です。

<エナメル質石灰化不全>
エナメル質の元となるタンパク質はうまく作られたけれども、その後うまく石灰化しなかった(硬くならなかった場合です)。

ただ、両者は厳密に区別できないことが多いため、通常は遺伝的なものでないものに関しては、「エナメル質形成不全」という言い方をします。

エナメル質が正常に作られなくなる原因

エナメル質が正常に作られなくなる原因
●エナメル質形成不全症(遺伝的なもの)の場合
生まれつき、歯を作るタンパク質や、タンパク質を分解する酵素の遺伝子に異常があることなどが原因とされています。

●エナメル質形成不全(後天的なもの)の場合
歯というものは、生まれた時点で全ての歯がしっかりと完成しているわけではありません。つまり、生まれた後もあごの骨の中で、徐々に作られていくのですが、エナメル質が作られる時期に何か障害が起こると、その障害が起こったその部分のみにエナメル質形成不全が現れてきます。ちなみに歯のどの部分にエナメル質形成不全が現れているかで、だいたい生後どのくらいで障害が起こったかを推測することができます。そのため、スウェーデンの教科書にはこの現象を、事故が起こった記録が残るようであることから、「歯のフライトレコーダー」と例えています。

エナメル質形成不全は、エナメル質が形成されている時期に次のようなことが原因で起こる可能性があります。エナメル質を作る元になる「エナメル芽細胞」は、外から来る刺激に弱いため、様々なことが原因になりうるのです。

<全身的原因>
・栄養不足(カルシウム、リン、ビタミンA,C,D(特にD))
・発疹が出る病気、熱が出る病気(特に生後1年くらいの時期)
・抗生剤(アモキシリン)の服用
・過度のフッ素摂取
・早産
・全身的な病気の影響

<局所的原因>
・乳歯をぶつけた
・乳歯のひどい虫歯(歯根周囲に膿を溜めた場合)

エナメル質形成障害への対処法・治療法

●フッ素で経過観察
エナメル質形成障害で圧倒的に多いのは、後天性の「エナメル質形成不全」の方です。歯の一部に部分的に着色があったり、凹みなどがあればその疑いがあります。多少着色している程度、凹みも軽度であれば、歯の質を強化するためにフッ素入りの歯磨き粉での歯磨き、歯科医院での定期的なフッ素塗布で生涯問題が出ないケースも多いです。

●コンポジットレジン修復(歯科用プラスチック)
歯が柔らかくなってしまっている場合や着色がどうしても気になる場合には、その部分を薄く削って、コンポジットレジンと呼ばれる歯科用のプラスチックを詰めることで解決できます。ただし、コンポジットレジンは年数が経つにつれ変色してくるため、色合いが気になる場合にはその都度詰め直しが必要になります。

●ラミネートベニアを貼り付ける
着色の範囲が広い場合には、歯の表面を全体的に薄く削り、その部分にセラミックのベニアを付け爪のようにつける「ラミネートベニア」を行うこともあります。

●セラミックを被せる
歯の形に問題があって、詰め物やラミネートベニアでは対処できない場合には、セラミックを被せる方法で歯の保護、審美性の回復が可能です。先天性のエナメル質形成不全症の場合は、全体的にセラミックを被せるなどの対処が必要になってきます。

お子さんの歯に異常な着色があっても、適切な対処をすることで問題がでないケースも多いため、ほとんどの場合それほど心配することはありませんが、念のため一度早めに歯医者を受診することをおすすめします。


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